予防歯科・PMTC
今までの歯科業界では、虫歯だから削って詰めよう、痛いから神経を取ろう、そして歯が動くから抜こうというのが常識でした。
しかし、最近の医療関係者は「予防」が最高の治療であると考えるのが当たり前になっています。
歯科医療は早期発見と継続的な口内管理へと変化しています。
つまり、病気になってからではなく、病気になる前に治療することで健康を維持しようという考え方です。
病気になる前に何が原因なのかを知ることができれば、病気になるのを未然に防いだり、重症化する前に治療したりすることができるのです。
一生健康的な歯を使うために
歯科でも、虫歯や歯周病などの病気が見つかってから治療するだけではありません。
口の中を健康にし、痛くなる前に改善する積極的な予防医学を推進しています。
つまり、診断と治療を通じて、口腔内の病気の原因となりうるものを特定し、排除することで、長期的に健康な口腔内環境を維持することを目的としているのです。
虫歯や歯周病などの病気にかかると、健康だった頃の歯に戻らなくなることがあります。
また、口腔内疾患にかかると、歯を失うだけでなく、周囲の口腔内環境に悪影響を及ぼし、心身の健康を含めた大切なものを失ってしまうケースも少なくないのです。
予防のために歯科医院に通う際には、虫歯や歯周病だけでなく、口の中のあらゆる部位をチェックすることが大切です。
例えば、顎の骨や顎関節、舌の粘膜の状態、口の中の癌の有無、噛み合わせや歯列、唾液の量や質などです。
定期的な精密検査を行うことで、見落とされがちなお口の中の病気を発見し、重症化する前に治療を開始することができるのです。
また、自分の口の中の状態を正しく理解することで、口の中の健康に対する意識を高めることができます。
歯を守るためには、早期発見・早期治療、むし歯予防の知識や技術の入手、意識の向上が重要であることを忘れてはなりません。
定期検診・クリーニング
定期検診では、国家資格を持つ歯科衛生士が、専用の器具を使ってマウスクリーニングを行います。
マウスクリーニングでは、歯の表面に付着した茶渋や赤ワインなどのステイン、タバコのヤニなどを除去します。
北欧の研究では、定期的にクリーニングを行うことで、虫歯や歯周病の再発を10人に1人以下に抑えられることが分かっています。
このような観点から、口内の定期的なクリーニングをお勧めします。
定期検診のメリット
定期的に歯科医院に通い、専門的な歯科治療を受けることで、歯を失う悲劇を回避できるほか、以下のようなメリットも得られます。
- 虫歯の予防
- クリーニングによる汚れの除去
- 歯の磨き方を学ぶ
- 歯の健康を維持する
- 費用が安く済む
- 通院にかかる時間が少なくて済む
定期的に歯科医院に通っている人とそうでない人では、歯の損失率に大きな差があることがわかっています。
虫歯や歯周病があっても、定期的に歯科医院に通って専門的な治療を受けていれば、早期発見につながり、後から病院に行くよりも症状の悪化に伴う治療の時間や費用を抑えることができます。
もちろん、定期的に通院している人は、ほぼ口腔内の環境が整っているので、新たに口腔内のトラブルが見つかっても、症状が軽いうちから治療を開始できることも大きなメリットです。
お子様の虫歯を予防する
ホ人間の口の中にはたくさんの細菌がいますが、生まれたばかりの赤ちゃんの口には虫歯菌がいません。
虫歯菌は、乳幼児期に両親から感染させることが、さまざまな研究からわかっています。
例えば、口移しで食べ物を与えたり、スプーンや箸を共有したりすると、赤ちゃんにむし歯がうつる可能性があります。
また、むし歯菌の感染が遅ければ遅いほど、生涯のむし歯の数は少なくなると言われています。
子どものむし歯を予防するためには、むし歯菌の感染をできるだけ遅らせることが重要です。
また虫歯は、親の口の中を清潔に保つことである程度予防できることもわかっています。
ホームケアとプロフェッショナルケア
お口の健康を維持するためには、ご自宅でのホームケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを両立させることが効果的です。
ホームケアには、食生活の改善や自宅での歯磨きの方法などがありますが、意外と知られていないプロフェッショナルケアをご紹介します。
歯科衛生士によるプロフェッショナルケア(PMTC)
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯科医院で行われる専門的な歯のクリーニングのことです。
毎日の歯磨きでは落としきれない細かい汚れや色素、歯垢(プラーク)、バイオフィルム(細菌の膜)を除去したり、フッ素を塗布したりします。
ホームケアだけでは難しい再石灰化を促進し、歯を修復して強くします。
PMTCは生涯にわたって健康なお口を維持するために、以下のような内容になっています。
ホームケアで解決できない問題は、プロフェッショナルなケアでしか対処できないのです。
クリーニングは、虫歯や歯周病を予防するだけでなく、歯本来の白さや輝きを取り戻すので、審美的な観点からも無駄がありません。
歯石を残すと、歯周病になる可能性が高くなります。
しかし、この歯石は歯にしっかりと付着しているため、ホームケアで使用する歯磨きブラシでは取り除くことができません。
歯科医院で専用の器具を使い、定期的に除去します。
家庭でも、低濃度のフッ素を含む市販の歯磨き粉で歯を磨き、歯科医院で塗布する高濃度のフッ素と併用すると、歯面へのバリア効果は飛躍的に高まります。
ご自宅で効果的なケアができるように、お口に合った道具やケア方法をご案内します。
薬用成分配合の歯磨き粉を積極的に使用することをおすすめします。
フッ素は歯の表面にバリアーを形成し、特に虫歯予防に効果があります。
口の中ですすぐだけなので簡単に効果が出せるのは魅力的ですね。
また、マウスウォッシュは歯垢の付着を防ぎ、虫歯や歯周病の予防、口臭予防にも効果的です。
特にフッ素入りのマウスウォッシュは、歯の表面を強化し、虫歯予防に非常に効果的なのでおすすめです。
歯磨きが苦手なお子様には、虫歯予防の一環として、まずマウスウォッシュで口をすすぐことをおすすめします。
定期的なメンテナンスの効果は抜群です
スウェーデンの臨床研究により、「定期的なメンテナンスを続けることで、約98%の歯を守ることができる」ことが分かっています。
定期的なメンテナンスを継続した人とそうでない人を比較すると、むし歯の発生率は4年間で約14倍、6年間で約69倍に増加しました。
定期的なメンテナンスを続けた人は、調査対象の全年齢を含めて30年後に平均0.6本の歯を失うという一本以下の結果になったのです。
この研究結果が明確に示しているように、定期的な歯のメンテナンスが歯を守るために非常に有効であることがご理解いただけると思います。
一方、80歳の日本人を対象にした調査では、残っている歯の本数は10本程度と言われています。
大人の歯の数は親知らずを除いて28本ですから、日本の今回の調査結果では、全体の半分以上の歯が失われていることになります。
一方、スウェーデンでは20本程度の歯が残っていると言われています。
日本と諸外国とで、老後の残存歯数が異なる理由は何でしょうか?
日本では「痛くなったら」歯科医院に行くという風潮が強いですが、歯科医療が進んでいるスウェーデンでは、痛くならないように「歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける」ことが当たり前になっています。
高齢者の残存歯数の大きな差は、定期的に歯科医院で専門的な診断を受けているかどうかです。
歯科医院の存在意義がスウェーデンと日本では全く異なり、残っている歯の本数に大きな影響を与えることがおわかりいただけると思います。
これからのお口の健康を考え、歯科医院に通う理由をアップデートしませんか?
プロの手による定期的な歯のメンテナンスを始め、生涯自分の歯を保つために努力しませんか?